マージョリー・テイラー・グリーンは大統領に「SAY HER NAME!」バッチ、同胞には「MUGA」ハットを贈ります。

マージョリー・テイラー・グリーンは大統領に「SAY HER NAME!」バッチ、同胞には「MUGA」ハットを贈ります。
Portrait of Rep. Marjorie Taylor Greene

勢いづく共和党強硬派

一般教書演説で、共和党員は相互にバイデン大統領の国境の開放政策を断固非難する誓いを立てており、国境警備の予算化なくして、他の(他国の戦争支援など)予算案は許可しないとの意思を確認していたばかりだ。一般教書演説では、マイク・ジョンソン下院議長はバイデン大統領の後ろで苦笑いをし、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(通称 MTG)は女子大学生が不法移民によって殺害された事件を受けて、「SAY HER NAME!」と問いただした(バイデン大統領は彼女の名前を間違えたが…)。

私たちはここ最近、MTGら極右の議員が先導し形骸化した下院を「戦いの場」に変えてきた数件の事件を見てきた。ハンター・バイデンのラップトップ、ケビン・マッカーシー元下院議長の解任、不法移民による女子学生殺害事件の責任追及など。

共和党員は「国を守る」というビジョンを共有し、一致団結していた。何故か、多数派の共和党員は「MAGA(アメリカを再び偉大にする)」であり、11月の大統領選でトランプを勝利させるのが大義名分で、しかもトランプ氏が不当にW.H.から引きずりおろされたと彼らが主張する、2020年以降続く民主党の失策によって、有権者が苦しめられているという不満(雇用、住宅、ホームレスなどの社会問題など)を聞いてきたからだ。

共和党は確かにこの路線でこれまで勝利してきている。トランプ氏が予備選を勝ち抜き、支持率において現在、トランプ氏がバイデン氏を大きくリードしている。共和党議員の内極右と呼ばれる政治家、MTGやマット・ゲイツ下院議員らトランピアンは、トランプ氏の再選の機運が高まっているのを根拠にその勢いをさらに強めてきている。

一方共和党内には、一定数の超党派と呼ばれる議員も存在しており、トベラルに融和的にふるまう。マイク・ジョンソン下院議長は過去に中絶や同性婚に反対するなど強硬な保守ではあるが、議決において超党派議員らを無視できず、穏健派と強硬派の間でのバランスを取るため政府寄り議決も度々実行してきた。

マイク・ジョンソン下院議長は、福音派系の政治団体法律顧問出身で、トランプ氏に近い人物と見做されている。彼はルイジアナ州立大学で経営学の学士号・法学博士号を取得、弁護士としてのキャリアをスタートし、キリスト教福音派を中心とする政治団体・法律顧問である「自由を守る同盟」(ADF)の上級法律顧問を務めた。2016年に、ルイジアナ州第4下院選挙区の代表として初当選し下院議員に。2019年から2021年まで共和党調査委員会の委員長を、2021年から2023年までは下院共和党会議の副議長を務めた。2020年大統領選挙の結果に異議を唱え、全国的な中絶禁止法を制定する法案を支持し、同性結婚を禁止する法律は違憲であるとしたオーバーグフェル対ホッジス裁判に影響を与えた。ウクライナをめぐっては、党内の右派の多くと同様、さらなる支援には反対の立場を取っていた。

2023年10月25日にマット・ゲイツ下院議員らが中心となって史上初めてケビン・マッカーシー氏を下院議長の椅子から解任した後、マイク・ジョンソン氏が後任として丸く収まっていたのは、そういった背景がある。以降、MTGはマイク・ジョンソン下院議長の行動を監視してきた。

マイク・ジョンソン下院議長は裏切り者?

マイク・ジョンソン下院議長がバイデンの犬?ではないかという疑いが徐々に濃厚となり、国境警備への予算を無視し、ウクライナやイスラエルへの戦争支援のための予算案を強引に通過させようとしている今、MTGら極右議員は怒りを爆発させている。具体的にはMTGは予算案が民主党に譲歩しすぎていると批判しており、共和党の多数派側に立つ新たな下院議長を見出す必要があると述べている。

2024年のアメリカ連邦議会の下院は、ウクライナやイスラエルなどに総額953億4000万ドル(約14兆7000億円)規模の支援を提供する緊急予算案を可決する見通しだ。この予算案には、ウクライナに608億ドル(約9.4兆円)、イスラエルに264億ドル(約4兆円)、台湾を含むインド太平洋地域に81億ドル(約1.2兆円)の支援が含まれている。この予算案は、ウクライナ東部の戦場でのロシアの前進を食い止め、武器の不足や士気の低下を防ぐためのものだが、一部の共和党議員はアメリカがこれ以上ウクライナやイスラエルへの支援に関与することに反対しており、特にMTGはウクライナ支援には強硬に反対している…

MTGはマイク・ジョンソン下院議長は「MAGA(アメリカを再び偉大にする)」の裏切り者であり、「MUGA(ウクライナを再び偉大にする)」だと。彼女は保守の赤色ではなく、リベラルの青色のMUGA帽子を掲げ、マイク・ジョンソン下院議長の解任を強烈に訴えた(一部メディアからは“脅迫”とまで言われているが…)。

分断に揺れる共和党

この動きに極右メディアも反応し、マイク・ジョンソン下院議長へ一斉射撃を開始した(MTGはメディアを使うのがうまい…)。一方、保守派の大手メディア(WSJ、FOX NEWSなど)は、マイク・ジョンソン下院議長を擁護し「MTGは共和党を分断しようとしている」と批判、一部メディアは「MTGは馬鹿だ。」とまで言っている。また、あるメディアはMTGは「モスクワのまわし者」と非難している。

NEW YORK POST April 21, 2024, Cover: NYET, Moscow Marjorie

NEW YORK POST: https://nypost.com/cover/april-21-2024/

ウクライナ戦争におけるロシアの大義「非軍事化と非ナチス化」はプロパガンダであり、ウクライナで民族虐殺はなく、ウクライナは民主国家であると西側諸国はこの主張を否定している。しかし、MTGは以前からウクライナ軍にナチスが含まれていることを指摘している。

今、共和党は超党派(55歳以上のベテランが多い)、極右(40代の比較的若手)そして穏健派、強硬派の意見が激しく対立し揺れている。そして保守メディアも例外ではない。

(参考)

共和党の超党派議員: ジェイ・オベルノルテ議員: 58歳(1965年生まれ) ジョン・コーニン上院議員:72歳(1952年生まれ)

極右議員: マージョリー・テイラー・グリーン議員: 49歳(1974年生まれ)マット・ゲイツ議員: 41歳(1982年生まれ)

これら共和党内の分断は、ウクライナの戦争支援のための緊急予算案がトリガーとなって爆発している。日本では「ほぼトラ」などのんびり傍観しているが、本場アメリカでは、トランプ氏再選への道のりは想像以上に険しい道のりのようだ。