パム・ボンディ司法長官は法でトランプ大統領を守り、アメリカを再び安全にする

パム・ボンディ司法長官は法でトランプ大統領を守り、アメリカを再び安全にする
Portrait of AG Pam Bondi

パム・ボンディ氏、米国司法長官に就任

2025年2月5日、パム・ボンディ氏はアメリカ合衆国の司法長官(AG)として、ホワイトハウスの大統領執務室で就任宣誓を行ました。ボンディ氏はマット・ゲイツ氏がスキャンダル等で辞退した事で白羽の矢が当たり、司法長官候補となっていました。

ボンディ氏の司法長官就任は共和党員からは「被害者に寄添う」「粘り強い」「経験豊富な」検察官であり、その地位に相応しいと歓迎された一方、民主党員からは、トランプ氏は2021年1月6日の議会議事堂襲撃事件を担当する司法省(DOJ)職員を一掃するために「忠実な」ボンディ氏を据えたのだと批判されました。

ボンディ氏は就任初日に「アメリカを再び安全にする」というスローガンを掲げて以降、その実現に向けた政策を強力に推進しています。彼女は司法省から政治的影響を排除し、法の透明性を確保することを目指しています。

ボンディ司法長官、トランプ大統領の政策を断固として推進

反キリスト教差別を根絶

2025年2月6日、トランプ大統領はワシントン・ヒルトンで開かれた全国祈祷朝食会で、バイデン政権下で司法省、FBI、IRS(国内歳入庁)が反キリスト教差別を行っていたと批判し、パム・ボンディ司法長官に連邦政府における「反キリスト教的偏見」を根絶することを目的とした司法省タスクフォースを設置するよう命じました。

トランプ大統領は、旧司法省が平和的なプロライフ運動※1 の抗議者をクリニック入口へのアクセスの自由法(FACE)※2 に基づいて起訴し投獄したと非難しており、大統領就任後間もなく一部の人々を恩赦していました。また、トランプ大統領は、FBIがカトリック教徒を暴徒と見なし、FBIが教会内でスパイ活動することを提案していた事がリークによって発覚した事や、IRSがオバマ政権下でキリスト教団体等の監視をしていた事を問題視していました。

「司法の兵器化」を終了

ボンディ司法長官はトランプ大統領の下で「司法の兵器化」を終わらせると宣言、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件でのトランプ氏の責任を問うジャック・スミス※3 特別検察官らが提起していた訴訟と、事件に関与したとされる人々の起訴について再審理するよう指示し、特別検察官の任命の制限についても言及しました。バイデン政権では、トランプ氏の訴追やハンター・バイデン氏の裁判に際して、頻繁に特別検察官が任命されていました。

しかし、旧司法省はトランプ氏が2024年の選挙で勝利した後、すでに起訴を取り下げており、最高裁も大統領は公務上の行為に対する訴追を免れると判断、また新司法省は既にスミス氏のチームメンバーを解雇しているため、この再審議はトランプ氏を起訴したスミス氏らの罪を改めて問い、またスミス氏による大統領の任期終了後の再訴追を警戒したものと予想されています。さらに、ボンディ司法長官は政治的な思惑からではなく、純粋に正しく職務を遂行しただけのFBI職員は、再審議の処罰の対象ではないとも付け加えています。

不法移民対策を推進

聖域都市への資金援助を停止

2025年2月5日、ボンディ司法長官はクリスティ・ノーム長官率いる移民関税執行局(ICE)への協力を拒否し、不法移民をかばっているとして、聖域管轄区域※4 への司法省からの資金提供を60日間凍結しました(2023年のニューヨーク市への司法省の助成金は約15億6000万ドル)。

イリノイ州を起訴

2025年2月5日、ボンディ司法長官は、イリノイ州とシカゴ市の移民政策(信託法・前進法)が連邦法に違反しており、ICEの活動を妨げていると主張し、シカゴ市、イリノイ州、および複数の当局者に対して訴訟を起こしました。JB・プリツカー知事(イリノイ州)は州の法律を遵守していると反論し強い反発を示しました。

ニューヨーク州を起訴

2025年2月12日、ボンディ司法長官はキャシー・ホクル知事(ニューヨーク州)、レティシア・ジェームズ司法長官(ニューヨーク州)、そして陸運局(DMV)のマーク・シュローダー委員を相手取り訴訟を起こしました。この訴訟は、不法移民犯罪の対応を巡るもので、特にレイケン・ライリー法※5 に基づく強制送還を円滑に実行するのが目的で、主にニューヨークの州法であるグリーンライト法(不法移民を含む州内の住民が運転免許証を取得可能にした法律)を標的にしています。キャシー・ホクル知事はこの訴訟を「無価値で宣伝目的」と批判しました。一方、ギャビン・ニューサム知事(カリフォルニア州)は、ニューヨークは主権国家ではないから連邦政府に従うべきだと述べ、ニューヨーク州の対応を非難しました。

CPACで不法移民対策について語る

2025年2月20日、ボンディ司法長官は保守政治行動会議(CPAC)で講演し、司法省の不法移民対策について語りましたが、MSNBCはこれを「党派的な動き」と非難しました。ボンディ司法長官は「街から凶悪犯罪をなくし、フェンタニルの蔓延と戦うのが何故、党派的なのか?」と反論しています。

エネミー法の発動を妨害する命令を解消

2025年3月16日、ボンディ司法長官は、3月15日にトランプ大統領が外国人敵対法※6 を発動して、ベネズエラの国際テロ組織トレン・デ・アラグアを強制送還するに際し、ジェームズ・ボーズバーグ地方裁判所判事が前代未聞の差し止め命令を出したとして、これを解消するための緊急動議を提出しました。

エプスタイン関連ファイルの機密解除

2025年2月27日、ボンディ司法長官は、小児性愛犯罪に対する厳しい取締りを行う政策の一環として、児童人身売買容疑者ジェフリー・エプスタイン(2019年にニューヨークの刑務所で獄死)に関連する極秘ファイルの第一段階をFBIの協力を得て公開しました。

極秘ファイルには、エプスタインによる児童人身売買の広大な人脈に関する情報が数多く含くまれており、その中にはマイケル・ジャクソン、アレック・ボールドウィン、ナオミ・キャンベル、ミック・ジャガー、アンドリュー王子、故エセル・ケネディ(ロバート・F・ケネディの母)、元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモの名前もあると言われています。

ボンディ司法長官は、この公開は「司法の透明性を高め、国民に説明責任を果たすための重要な一歩」と述べています。また、ボンディ司法長官はエプスタイン関連のファイルについて、新らたに任命したカシュ・パテル※7 FBI長官に、FBIによる隠蔽や文書の紛失を防止し、すべての文書を公開することを約束させました。

2025年3月3日、ボンディ司法長官は、FBIがトラック一杯分のエプスタインのすべての極秘ファイルを届けたと述べました。また、謎のベールに包まれていたジョン・F・ケネディとマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺に関連するファイルも近日公開すると述べましたが、ジョン・F・ケネディの暗殺に関しては、2025年3月19日に公開されました。

テスラへの攻撃に厳しい警告

2025年3月20日、ボンディ司法長官は、テスラに対する攻撃を「国内テロ」と見なし、テスラの資産を攻撃した者を「刑務所送りにする」と警告しました。トランプ政権が発足して以来、テスラのディーラーや充電ステーションが破壊行為や放火、器物損壊などの攻撃を受ける事件が相次いでおり、既にオレゴン州、コロラド州、サウスカロライナ州で3人が起訴、最低5年から最長20年の懲役刑を受ける可能性があります。これらの攻撃によって、テスラの株価は急落しており、テスラブランドの信頼性にも影響を及ぼしています。この背景には、テスラのCEOイーロン・マスク氏率いる政府効率化省(DOGE)がトランプ政権下で権力を乱用しているという一部市民からの強い反発があります。

参考

パム・ボンディ氏プロフィール

※パム・ボンディ(Pamela Jo Bondi, Pam Bondi)
パム・ボンディ氏は1965年11月17日フロリダ州タンパ生まれ、フロリダ大学、ステットソン大学で学位と学士号を取得した後、フロリダ州で検察官としてキャリアをスタートさせました。
1991-2011: ボンディ氏はフロリダ州ヒルズボロ郡で検察官として活動
2006: 元メジャーリーグ選手ドワイト・グッデン氏の保護観察違反事件(保護観察中に薬物を使用し逮捕された後、服役)を担当し、注目される
2011-2019: フロリダ州司法長官を務め、共和党の一員として活動
2020: ドナルド・トランプ大統領の弾劾裁判で弁護団の一員を務める
2024: 「アメリカ・ファースト政策研究所」の法務を担当
2025: アメリカ合衆国司法長官に就任

パム・ボンディ氏とトランプ裁判

2020年のアメリカ大統領選挙後、トランプ氏は選挙不正を主張し、いくつかの州で訴訟を起こしました。これに関連して、パム・ボンディ氏はトランプ氏の弁護団に加わり、選挙不正や弾劾裁判において彼を擁護しました。彼女は、トランプ氏がウクライナ問題や議会議事堂襲撃事件に関して無罪であると主張し、選挙不正の証拠を提示するよう求めました。また、トランプ氏に対する複数の訴訟においても、彼の行動が合法であると弁護しました。

トランプ氏からの資金提供

2016年、トランプ財団がフロリダ州司法長官であったパム・ボンディ氏に関連する団体へ25,000ドルを寄付したことが議論を呼びました。この寄付は、トランプ大学に関する詐欺疑惑の調査をボンディ氏が行うべきか検討していた時期に行われたもので、税法違反とされ罰金が科されました。ボンディ氏は、この寄付が調査の決定に影響を与えたという主張を否定し、トランプ氏も寄付が政治的意図を持たないものであると主張しました。この件は、政治家と資金提供者の関係における透明性と倫理の重要性を浮き彫りにしました。

注釈

※1 プロライフ運動(Pro-life Movement)
プロライフ運動とは、主に人工妊娠中絶に反対し、胎児の生命を守ることを目的とした活動や思想のことを指します。この運動は、多くの場合、宗教的、道徳的、倫理的な価値観に基づいています。特にアメリカでは活発で、キリスト教の信念に強く結びついていることが多いです。一方で、プロライフ運動は人工妊娠中絶を支持する「プロチョイス」運動と対立することが多く、社会的な議論を巻き起こしています。

※2 クリニック入口へのアクセスの自由法(Freedom of Access to Clinic Entrances Act, FACE)
「身体的な力や脅迫、物理的な妨害を用いて、妊娠中絶を受けようとする人や宗教的な礼拝を行おうとする人を妨害する行為」「 妊娠中絶クリニックや宗教施設の破壊や損傷を意図的に行う行為」を禁止する法律で、妊娠中絶クリニックや宗教施設への暴力や妨害行為が増加していた事を受けて1994年に制定されました。

※3 ジャック・スミス(John Luman Smith, Jack Smith)
ジャック・スミス氏は、2022年11月にメリック・ガーランド前司法長官によって特別検察官に任命されました。彼の任務は、2021年1月6日の議会議事堂襲撃事件や、トランプ氏が大統領在任中に機密文書を不適切に取り扱った疑惑に関する捜査を監督することでした。ボンディ司法長官はスミス氏を「司法の兵器化」の典型例として敵視しています。

※4 聖域管轄区域(Sanctuary Jurisdictions)
不法移民に対して比較的寛容な政策を採用している地方自治体のことで、移民法の執行への協力の制限、不法移民への公共サービスの提供、不法移民の犯罪被害者の保護等の政策を行っています。
州:カリフォルニア州、ニューヨーク州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ワシントン州、オレゴン州
都市:ニューヨーク市、ロサンゼルス市、サンフランシスコ市、シカゴ市、シアトル市、ボストン市

※5 レイケン・ライリー法(Laken Riley Act)
窃盗、強盗、あるいは死亡や身体の傷害を引き起こす犯罪で有罪判決を受けた不法移民は拘留され、刑務所から釈放された後、国外追放されることを義務付ける法律です。

※6 外国人敵対法(Alien Enemies Act)
この法律は「外国人・治安諸法(Alien and Sedition Acts)」の一部であり、1798年にアメリカ合衆国の第2代大統領ジョン・アダムズの時代に制定されました。この法律は、戦時中にアメリカ国内にいる敵国出身の外国人を拘束または強制退去させる権限を大統領に与えるもので、フランスとの緊張が高まっていた時期に、言論や移民を制限するために導入されました。アダムズ大統領は、1798年から1800年にかけてのフランスとの「擬似戦争」と呼ばれる海上での衝突が続く中、この法律を活用しました。この法律が使用されたのはすべて戦時中で、アメリカ史上3回しか使用されたことがなく、最近は第二次世界大戦でドイツ人やイタリア人の投獄、日系アメリカ人の大量投獄に使用されました。

※7 カシュ・パテル(Kashyap Pramod Patel, Kash Patel)
カシュ・パテル氏は過去に下院情報委員会補佐官、 国家安全保障会議テロ対策局長等を歴任、彼はアメリカ政府内の「影の権力構造(ディープステート)」を批判、これを排除することを目標に掲げています。また、保守系メディアに影響力を持つ人物として有名です。著書『Government Gangsters』には「ディープステート」のメンバーとされる人物のリストが記述されています。