「サウンド・オブ・フリーダム」映画レビュー:一級のエンターテイメント作品

「サウンド・オブ・フリーダム」映画レビュー:一級のエンターテイメント作品
『サウンド・オブ・フリーダム』のワンシーン

プロローグ

2023年に米国で話題となった注目の映画「サウンド・オブ・フリーダム」が2024年9月27日に日本公開となりましたが、MMTも先日ようやく鑑賞できました。米国で公開までにおよそ5年も要した作品が、2024年に一般の映画館で鑑賞できるというのは、本当に幸せとしか言えません。日本公開に向けて尽力された映画関係の皆様に私たちから最大級の敬意と称賛を贈りたいと思います。

さて映画の内容ですが、最初にティム・バラード関連の作品の定石として「この作品は実話に基づく」といったクレジットが流れます。この「基づく」というのが肝です。この映画の最大の魅力は「児童人身売買」という重たいテーマを扱いながらも、一級のエンターテイメント作品に仕上がっており、社会問題に関心が強くはなく、純粋に映画ファンとして鑑賞しても、十分に楽しめてしまうというところです。主人公の「神の子は売り物じゃない」というセリフや「サウンド・オブ・フリーダム」が「解放された子供たちの歓びの声」という意味であることにみなさんもきっとこころ動かされることでしょう。

映画「サウンド・オブ・フリーダム」

実話を基にした社会派サスペンス映画。米国の元政府職員ティム・バラードが人身売買の犠牲となった子供を救出するために奮闘する姿を描く。

映画『サウンド・オブ・フリーダム』公式サイト
児童誘拐、人身売買、性的虐待といった国際的性犯罪の数々。本作は、それらの犠牲となった少年少女を救い出すために過酷なミッションに挑んだ実在の人物ティム・バラードの闘いを基にした衝撃の物語である。映画『サウンド・オブ・フリーダム』公式サイト

2023年アメリカ
配給:ハーク
制作:エンジェルスタジオ
上映時間:2時間11分(ジム・カヴィーゼルのメッセージ含む)

スタッフ

監督: アレハンドロ・モンテベルデ
製作総指揮: メル・ギブソン、デイヴ・アダムス、カルロス・アルバレス・ベルメヒヨ
プロデューサー: エドゥアルド・ベラステーギ
脚本: ロッド・バール、アレハンドロ・モンテベルデ
音楽: ハビエル・ナバレテ 撮影: ゴルカ・ゴメス・アンドリュー
編集: ブライアン・スコフィールド

キャスト

ティム・バラード: ジム・カヴィーゼル
キャサリン・バラード: ミラ・ソルヴィノ
バンピロ: ビル・キャンプ
パブロ: エドゥアルド・ベラステーギ
ロシオ: クリスタル・アパリチ
ホルヘ: ハビエル・ゴディーノ
ロベルト: ホセ・ズニーガ

ストーリー

ティムは、米国国土安全保障省の捜査官として、児童人身売買犯罪の摘発に取り組む毎日を過ごしている。ある日、児童ポルノを制作し人身売買を斡旋している男を拘留するが、証拠品である児童ポルノのファイルを調査確認する作業に耐え切れず絶望し、この仕事を辞める決心をした同僚から不意に「お前は何人のペド(Pedophiliaの略)野郎を捕まえた? それで、何人の子供を助けた?」と尋ねかけられる...

A scene from the movie Sound of Freedom
映画「サウンド・オブ・フリーダム」のワンシーン

子供をひとりも助けられていないことに気づいたティムは拘留中の男から性的虐待の被害者である子供の情報を入手するために大胆な行動を起こす。そして児童ポルノに出演していたホンジュラス出身の「テディ・ベア」と呼ばれる男の子(ミゲル)の情報を入手し米国に呼び寄せる。ティムは国境付近の検問所でミゲルを発見し救出に成功する。しかし、ミゲルの姉(ロシオ)も斡旋業者に売られていることを知ってしまう。

A scene from the movie Sound of Freedom
映画「サウンド・オブ・フリーダム」のワンシーン

ティムは姉の女の子も救出するために特別な捜査許可を受け、南米コロンビアに渡る。そして地元の警察(ホルヘ)や犯罪組織に通じた人物(バンピロ)の協力を得て、大がかりなおとり作戦を開始するが、すぐには結果を出せず、上司から捜査を打ち切り帰国するよう命ぜられる。

行き詰ったティムは途方に暮れるが、バンピロの言葉に勇気づけられ、政府機関を退職し、コロンビアで捜査を続けるという一大決心をする。ティムの妻(キャサリン)はそれを受け入れる。そして青年資産家(パブロ)の資金援助を受け、離島でのおとり作戦を敢行するが、ロシオは見つからない。ロシオは何処にいるのか?

作戦で拘留した斡旋業者の聞き取りの結果、ロシオは反政府組織に売られていたことが判明する。果たして、ティムはコロンビアの奥地にいると思われるロシオを救出し、ミゲルとの約束を果たすことができるのか?

見どころ

実話に基づくストーリー、役作りのために実際の捜査に同行までした主演のジム・カヴィーゼルの演技、社会問題に関する強いメッセージ性が視聴者を引き付ける。※日本版では、エンドロール中にQRコードが表示され、映画の制作背景や込められた想いを語るスペシャルメッセージが流れます。

ティム・バラードのコメント

「この映画を通じて、世界中の人々がこの問題の深刻さを理解し、行動を起こすきっかけになれば」「ジム・カヴィーゼルの演技は非常にリアルで、私たちの活動の真実を見事に表現している」「この映画が多くの人々にインスピレーションを与え、児童人身売買に対する戦いに参加する人々が増えることを願っている」

日本での評価

Filmarks調査では、平均評価は4.0/5.0。特に高評価(4.1 - 5.0)が39%、中評価(3.1 - 4.0)が53%を占めています。

興行成績
日本での公開初週末の興行成績は好調で、多くの劇場で満席が続いています。

観客の声
「実話を基にした映画で、非常に感動的だった」「児童人身売買の現実を突きつけられ、深く考えさせられた」「ジム・カヴィーゼルの演技が素晴らしかった」

映画のリアルな描写と社会問題への強いメッセージに感銘を受けたという声が多く寄せられている一方で、テーマの重さから鑑賞をためらう人もいるようです。

日本の一部のメディアは、映画を高く評価し、その社会的意義を強調していますが、映画の内容が過度にドラマチックであると批判するメディアもあり、評価が分かれています。

日本公開までには多くの困難がありました

児童誘拐や人身売買といった重いテーマを扱っているため、公開に対する懸念がありました。これらのテーマは非常にセンシティブであり、観客の反応が予測しにくいものでした。

日本での配給を確保するためには、映画の内容やメッセージが適切に伝わるようにする必要がありました(配給会社との交渉やマーケティング戦略の策定を含む)。

日本公開に尽力した関係者と会社

株式会社キネマ旬報社:https://www.kinejun.com/
キネマ旬報社は、日本での配給を担当し、映画のプロモーション活動を積極的に行いました。特に、映画のテーマやメッセージを広めるためのマーケティング戦略を策定し、観客に深い印象を与える工夫をしました。

株式会社フィールドワークス:https://www.fieldworks.ne.jp/
フィールドワークスも配給に関わり、映画の上映館の確保や宣伝活動をサポートしました。彼らの協力により、全国各地での上映が実現しました。

エドゥアルド・ベラステーギ:
プロデューサーとして、映画の制作と公開に大きく貢献しました。また、パブロ役としてこの映画に出演しています。彼は映画のメッセージを広めるために多くの努力を惜しまず、日本での公開に向けた交渉にも積極的に関わりました。

ジム・カヴィーゼル:
主演俳優として、映画のプロモーション活動に積極的に参加し、映画のメッセージを広めるために尽力しました。彼の影響力は、日本での公開を後押しする重要な要素となりました。

ジム・カヴィーゼルのメッセージとQRコードが入ることになった経緯

プロデューサーのエドゥアルド・ベラステーギや監督のアレハンドロ・モンテベルデがメッセージを強く伝えるために、ジム・カヴィーゼルの個人的なメッセージが効果的と判断しました。

ジム・カヴィーゼル自身がこの映画のテーマに強い共感を持っており、映画のプロモーション活動にも積極的に参加していました。彼は映画のメッセージを広めるために、自らの言葉で観客に訴えかけることを希望しました。

日本の配給会社もこの取り組みに協力し、エンドロール中のQRコード表示などの工夫を行いました。

全国の上映劇場

サウンド・オブ・フリーダム劇場情報
theaters.jp:https://theaters.jp/20788

映画「サウンド・オブ・フリーダム」は特に子供を持つ親にとっては心に響く内容となっています。ぜひ劇場で観てくださいね😊

参考

実話と異なる脚色

映画の中では、緊張感を高めるためにいくつかのシーンがドラマチックに演出されています。例えば、救出作戦でのアクションシーンや、敵との対決シーンなどが強調されています。

→ 映画のクライマックス、ティムは武器を所持した性的虐待の加害者である反政府組織のボスと素手で格闘し、遂に…(詳細は劇場でご確認ください)

映画「サウンド・オブ・フリーダム」のワンシーン

映画では、ティム・バラードが特定の期間に南米コロンビアで子供たちを救出する活動を中心に描いていますが、彼の組織であるO.U.R. (Operation Underground Railroad)の活動はコロンビアのみならず、ハイチなどの複数の国で長期間にわたって行われました。

映画のセリフは実際の発言ではなく、また、映画の登場人物である姉弟の子供ロシオ、ミゲルや協力者ホルヘ、バンピロ、パブロは実在の人物をモデルにしているわけではなく、長年のO.U.R. の活動を約2時間の映画にまとめるための脚色として登場します。

ストリーミングサービスでの配信

ネットフリックスやAmazonプライムビデオ、Disney+などのストリーミングサービスでは、政治的問題、ライセンスの問題、規制の厳しさ等があり、日本での配信の予定はいまのところ発表されていません。

政治的圧力

ジム・カヴィーゼルや映画のモデルとなったティム・バラードが、Qアノン支持者とされることがあり、これが映画に対する批判や政治的圧力の一因となっています。

一部のリベラルなメディアは、この映画をQアノンの陰謀論と関連付けて報道しており、これが映画に対する批判を強めています。一方、保守派の政治家やメディアは映画を支持しており、政治的対立が生じています。

※日本では特に大きな政治的圧力や議論は報告されていませんが、公開規模が比較的小さいことが指摘されています。

キリスト教との関係

映画「サウンド・オブ・フリーダム」は、クリスチャン映画としての側面も持ち、キリスト教の価値観を広めるためのツールとしても機能しています。米国では多くの教会やクリスチャン団体が映画の上映を支援しています。

ティム・バラード自身が敬虔なキリスト教徒であり、彼の信仰が彼の活動の原動力となっています。

エンジェルスタジオ(Angel Studios)は、キリスト教の価値観や信仰に深く根ざした映画制作会社です。エンジェルスタジオは、キリスト教の価値観を広めることを目的として設立されました。創業者たちは、家族向けで信仰に基づいたコンテンツを提供することを目指しています。

Angel Studios:https://www.angel.com/home

メル・ギブソンはカトリック教徒であり、その信仰が彼の映画制作に大きな影響を与えています。彼はイエス・キリストの最後の12時間を描いた映画『パッション』(原題:「The Passion of the Christ」)をジム・カヴィーゼルと初めてタッグを組み制作しましたが、過激な描写などから多くの議論を呼びました。

ジム・カヴィーゼルもまた、キリスト教徒として知られており、映画『パッション』でイエス・キリストを演じたことでも有名です。

※映画『パッション』は2025年4月26日現在、Netflixにて配信中です!ぜひ観てくださいね😊

Watch The Passion of the Christ | Netflix
Wreedheid. Lijden. Opoffering. Dit intense en aangrijpende Bijbelse epos volgt de laatste uren van het leven van Jezus Christus, van het verraad tot de kruisiging.

日本の活動団体の反応

日本のキリスト教団体や児童人身売買撲滅に取り組む慈善団体は、映画「サウンド・オブ・フリーダム」を前向きに受け止めており、映画を通じて人身売買の問題に対する意識を高めることを期待しています。

日本福音同盟 (JEA)

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